レッドイーグルス、初戦を延長で飾る。新風の予兆は?

クラブチームとして生まれ変わったレッドイーグルス北海道。初戦の観衆は749人



取材・文/千葉修太郎

2021-2022年シーズンからクラブチーム化したレッドイーグルス北海道が、東北フリーブレイズとの開幕戦を4-3で制した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、調整の最終段階と言えるプレシーズンマッチをキャンセルして臨んだ今シーズン。延長戦にもつれ込む苦しい展開だったが、なんとか初白星を獲得した。クラブ化により変化を見せつつあるチームが、2連覇へ向かって好発進を切った。

流れが行き来するせめぎ合い


試合序盤、タレントを揃えるレッドイーグルスが分厚い攻撃を展開。
第1ピリオド3分に、今季ひがし北海道クレインズから移籍加入したFW入倉大雅がゴール付近のこぼれ球を確保し振り向きざまにシュートを放って決めると、そのわずか1分後の4分には右コーナーのFW髙木建太のパスをゴール前のDF山田虎太朗が押し込み、リードを一歩広げた。しかし、氷上のプレーヤーが1人少ないキルプレーで迎えた16分に失点。
それでも第1ピリオドは敵陣でプレーする時間もある程度長く、チームとして悪くはない出来だったのではないだろうか。

開幕戦初ゴールの入倉(左から2番目)を祝福


第2ピリオドで輝きを放ったのは、38歳のベテランFW百目木政人。
氷上のプレーヤーが1人多いパワープレーが終わった直後となる4分、フリーで受けて抜け出して入倉からパスを受け、強烈なスラップシュートを突き刺した。その後、得点こそ見られなかったものの、要所で相手ゴール付近のチャンスを演出。今季のプレーが楽しみになる。
このままレッドイーグルスが突き放すかに思えたが、この後は反則もありリズムが崩れた様子。点差は3-1のままだった。

随所で彼らしいプレーが光った百目木


第3ピリオドのシュート数はレッドイーグルスの6本に対して東北フリーブレイズは2倍の12本。この数字が物語るように、レッドイーグルスは自陣でのプレーを強いられ、東北ペースの時間帯になった。GK成澤優太を中心に体を張って踏ん張るレッドイーグルスだったが、10分のキルプレーで失点。3-2での逃げ切り勝ちが見え隠れしだす17分にも
1点を失い、ここに来て試合は振り出しに戻った。

延長戦突入、激戦を制したのは…

流れを渡したが、白星は渡さない。

レッドイーグルスのそんな気持ちがサドンデス方式で行われる3人対3人の延長戦で具現化した。FW入倉、高木、DF山下敬史がシフトされた延長1分、自陣から一人で上がった山下がマークについた相手プレーヤーの隙を突き、敵陣のブルーラインを過ぎた辺りから狙い、ゴールネットを揺らした。
シュートはあっさり決まったかのように見えた。しかし、拳を突き上げる山下の表情は、喜びに安堵感が混じっていた。

決勝ゴールを放つ山下。GKの予測を外す円熟の一撃だった


「最高の結果だった」菅原監督


試合後の記者会見で、菅原宣宏監督は開口一番、「皆さんに協力いただいて、開幕を迎えることができた」と短く語った。新チームの始動からこれまでの新型コロナウイルスの感染状況などを踏まえた発言に思える。プレーする場が与えられたことに、率直に感謝した様子だった。

プレーについては、如実に現れた調整不足を監督は口にした。
「プレシーズンマッチをすることで(通常調整には)段階ができるが、(本番が)一気にきた」。

ゲーム感覚を取り戻しながらのプレーだったが、「最後まで頑張り何とか勝利できた。最高の結果」と結んだ。

また、まばらだったが、会場を訪れたファンがクラブチーム化によって変わった新たなユニホームを着ていたことについては、「見慣れない景色で不思議な気持ちだったが、パっと見た瞬間は嬉しかった」と語った。

チームの今後については「いい守備から攻撃につなげるのが基本なので、守備を重視する」と明確。攻撃に長けた選手が多いことから「守備を重視しながら選手の個性を出していく」方針だという。目指すは2連覇だ。

記者会見に臨む菅原監督



クラブチーム化によって変わったこと、とは



会場の周りには「RED EAGLES」のロゴをあしらったのぼりが立ち並び、選手の顔写真を使った紹介パネルも設置。試合中、レッドイーグルスの選手がゴールするたびに、電光掲示板には燃える炎の映像をバックに「GOAL」の文字が浮かび上がり、その際、鷲が飛ぶ時の鳴き声を活用したエモーショナルな音楽が響き渡る。
昨シーズンまでに無かったホームゲームでの演出が目新しかった。

レッドイーグルスは「試合をいかに見せるか」というテーマに着手し、試行錯誤を続けているようだ。

チーム関係者に「クラブチーム化で変わったことは何か」と聞いてみたところ、「端的に言うと、選手一人ひとりの意識かもしれない」と返答があった。チームは新たなファン獲得に向け、「すぐに、効果的に」行動できることを考えた結果、SNSでの情報発信にまず取り掛かったという。企業チームではなくクラブチームとしては、アイスホッケーで稼いでいくことを考えなければいけない。

あくまで筆者の個人的な感想だが、アイスホッケー選手は他の競技に比べてなぜかルックスの整った選手が多い。
他にも、状況を瞬時に判断し、相手の思考を読んで最適な発言&行動を選ぶ能力など、ビジネスシーンで求められる能力が高かったりもする。(それは、速い展開の試合で生き残るためなのか……)。

今回チームは、クラブ化をきっかけに「選手のルックスの良さを武器とした20~35歳の新規女性ファン獲得」に向け、個人でインスタグラムやTikTokでの情報発信を始めた。

それには「初めて試合を見に来ました」「グッズ買いました」という反応が寄せられているという。今後の反響にも期待したい。

他にも、ファンのことを鷲になぞらえ「ワシスタント」と呼ぶようにもなり、男性アイドルグループの戦略を取り入れたような施策も展開している。

ただ強かったり、成績が良ければチームや選手の人気が出る時代はとっくに終わっている。

集客に向け、どの競技でも知恵を絞っているのが現実だ。コロナ禍の困難さもあるが、現在のレッドイーグルスには、そんな国内のプロスポーツの現状が、縮図のように表れているのではないだろうか。

今後、一層の変化が期待できそうだ。

<記事了> ※写真下に編集部からのメッセージあり

会場周辺に並ぶレッドイーグルス北海道ののぼり
選手の紹介パネル
客席には新たなユニホームの「ワシスタント」も

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