ファイナル第4戦の勝利へ。
戻ってきた頼もしき「若武者」相木隼斗が優勝をたぐり寄せる

相木隼斗選手(右)の復帰&活躍から流れが変わるか(撮影:アイスプレスジャパン編集部/1月6日)

文/アイスプレスジャパン編集部 写真/HL Anyang、レッドイーグルス北海道、編集部

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン
4月4日(木) プレーオフファイナル 第3戦@韓国・アニャンアイスアリーナ

HLアニャン 0(0-0、0-2、0-3)5 レッドイーグルス北海道
ゴール:【アニャン】なし 【レッドイーグルス 】相木、今、高橋、高木、中屋敷
GK:【アニャン】ダルトン 【レッドイーグルス 】成澤
シュート数:【アニャン】33 【レッドイーグルス】22

「負ければ終わり」の状況で現れた待望の『ラッキーボーイ』

まさかの地元2連敗から韓国に乗り込んだレッドイーグルス北海道にとって“負ければ終わり”のプレーオフファイナル第3戦。この大事な試合でレッドイーグルスに待望の『ラッキーボーイ』が降臨した。

膠着状態が続くなか両者無得点で迎えた第2ピリオド11分、HLアニャンはGKマット・ダルトンがゴール裏に流れたパックを処理。リムを使って大きくクリアしディフェンスへと繋ぐ。そこからディフェンスの選手が逆サイドへと大きく展開しようとしたパスに対して、牛来拓都が目一杯右手を伸ばし妨害するとパックがブレードにあたり、その軌道が変わった。そして、その軌道の先には“どフリー”になっていた背番号98が待っていた。

相木選手のゴールの瞬間(アジアリーグアイスホッケーTVより)

一瞬の攻防だった。ゴール前にぽっかりと空いたスペースで相木が躍動した。

背中側から送り込まれた難しいパックの動き。しかもパックは跳ねていた。しかし相木は見事なスティックさばきで猫のように暴れるパックのバウンドをコントロールすると、右にパックを持っていく動きからぐいっと左へドライブ。そしてシュートを打ち込んだ方向はふたたび右サイド。

このめまぐるしい横方向の動きにはさすがにHLアニャンの守護神、マット・ダルトンもついていけない。相木の放ったパックは見事にゴールネットへと突き刺さった。

脳しんとうで2試合欠場から、復帰・即、ヒーローへ

相木選手(左)はアシストの牛来選手とともに喜びを分かち合う(アジアリーグアイスホッケーTVより)

この相木のゴールはファイナルの流れを変えるには充分すぎる重みを持っていた。

「ゴールが取れたのは運が良かっただけだと自分では思っているので。でもそれがチームに貢献できることはすごく大きいですし、その試合に勝てたというのは僕自身嬉しく思っています」と、その瞬間を相木は謙虚に振り返る。

レッドイーグルスはこのゴールを皮切りに第2ピリオドは今勇輔の追撃ゴール、さらに第3ピリオドには高橋聖二のペナルティーショット、髙木健太のエンプティーネッター、中屋敷侑史のとどめの1点、と立て続けにゴールが生まれて終わってみれば5-0の完勝。

この日は牛来選手(左から2人目)の献身的な動きも光った(写真提供:HL Anyang)

シュート数はHLアニャンの33に対し22と11本も少ない状況ながら、レッドイーグルスは効率の良い攻めで得点を量産することに成功。レギュラーリーグ最終週から続いていた対HLアニャンの連敗をついに4でストップした。

「本当に悔しい気持ちしかなかった」ファイナル第1&2戦の欠場を乗り越えて

相木は苫小牧でのレギュラーシーズン最終戦での接触プレーで軽度ではあるが脳しんとうの診断がくだり、規定によりプレーオフ第1・2戦はラインナップから外れていた。

「試合に出られなかったこと自体が悔しく思っていましたし、僕が出ていないなかで負けるというのも上(観客席)から見ていてとても悔しかったですし……本当に悔しい気持ちしかなかったので」

その気持ちを韓国での第3戦にぶつけた。そして「相木が戻ってくれば……」とファンが熱望するなかでの大活躍。これを『ラッキーボーイ』と言わずして他にどう表現すれば良いというのか。

苫小牧ではパブリックビューイングで約100人のファンが相木のゴールを画面越しに見つめ、そして快哉を叫んだ。ゴールの瞬間はファン同士がハグし合って喜びを共有し、全員が立ち上がって拍手を送った。

プレーオフを制するには『ラッキーボーイ』の出現が不可欠。第2戦まではこのファイナルを最後に引退を表明している36歳のシン・サンウがHLアニャンのラッキーボーイ的存在だったが、”ボーイ”と呼ぶなら相木隼斗の若さと勢いの方がよりふさわしい。相木がその存在となれたことは、単なる戦列復帰、という以上のインパクトを彼がチームに届けたことは間違いない。

あと2つ。崖っぷちからの大逆転はこれからだ。

「ファンのみなさんが待っていてくれたので、結果として残せたのは心から嬉しいです。でもまだ第4戦とその先の試合も残っているので。まずは第4戦に向けて準備をしてきたので……、この試合で全部を出します」と相木は第4戦以降も相手の嫌がるプレーを徹底することを決意している。

ガンガンとフォアチェックを仕掛ける運動量とマインドは相木の真骨頂。チャンスメイクに、そして得点に、と『ラッキーボーイ』は前しか向かない。

「この緊張感で試合ができるというのは選手としてすごい幸せなことでありますし、このファイナルの舞台を楽しんで、たくさんの良いプレーを見せたいと思います」

相木がそのプレーで、レッドイーグルスに、そして信じて待っているファン……“ワシスタント”に、とびっきりの朗報を届ける。

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