準決勝は2試合ともに延長決着。
激戦の結果、決勝はクレインズとフリーブレイズが3年連続で対決

文/アイスプレスジャパン編集部 写真/福村香奈絵

全日本選手権 準決勝
ひがし北海道クレインズ 2(0-0、0-0、1-1、0-0、PSS1-0)1 レッドイーグルス北海道

東北フリーブレイズ 5(2-1、1-0、1-3、OT1-0)4 栃木日光アイスバックス 

長野市・ビッグハットで行われている第90回アイスホッケー全日本選手権(A)は12/16(土)に準決勝2試合が行われた。ベスト4にはすべてアジアリーグ勢が進出。お互いの意地と誇りをかけた試合は多くの方の記憶に残ったに違いない。
大変申しわけない思いだが、当編集部は諸般の事情によりこの日だけ取材陣を現地に送れなかった。そのため、当記事では編集長ポタやんがJIHF公式サイトによる録画ネット中継を見てのレポートををまとめさせていただく。普段とは違うスタイルでの記事としてお読みいただければ幸いだ。

お互いにらみ合って60分。終盤一気にヒートアップも微妙な思いが

アジアリーグのプレーオフなどでも決着がつくような状況ではえてしてこのような展開になることが多いが、さすがに全日本でこれだけ消極的なプレースタイルで両者戦えば、それは点が入らないわ、という試合。

お互い徹底的に失点のリスクを避けて、ゴール前にもあまり人数をかけずシュートも単発で、ボクシングでいうなら「打ちに行ったらすぐにステップバックしてかわすような戦術」をお互いがとっていた。それだけ、負けられない全日本のタイトルの重みというものも感じる一方で、この2チームならもっと攻撃的に行ってよ、という思いを持ったことも確か。
特に、レッドイーグルスは過去3年決勝に進出していないという事実がメンタル的に重くのしかかっていたのか、普段の分厚い攻撃力が影を潜めていた感がある。サッカーワールドカップのベスト16がかかったクロアチア戦後の森保ジャパンへの感想と同様、60分で決め切っておかなければという試合だったんだろう、レッドイーグルスにとっては。

試合は第3ピリオド、高橋聖二のゴールでレッドイーグルスが先制。ちょっとした相手のミスを見逃さずゴールに流し込む勝負勘はさすがでした。
特に大舞台ではいつもふっと現れていいところをかっさらっていく(←むちゃむちゃ褒めてます)印象のある背番号8のゴールでついにHREの呪縛が解けるかなと思ったら、その直後に失点。クレインズも譲らない。先制を許してから一気にギアを上げてここを決め切ったクレインズの凄みを感じたし、大津晃介のゴール前のムーブも見事。
この2分間は両者とも日本トップレベルの攻めを1回ずつ見せてくれて、「さあ、この後どうなる!」とワクワクしてきたところだったのだけれども……、また両者ガードを固めてしまったのは見るものとしてはちょっと残念。それはそれで勝ちにこだわる姿勢はプロらしくはあるんだけれども。

PS戦の脇本侑也選手の守りにはしびれた

OTもお互いに失点をしないよう慎重にケアしながら5分が過ぎ決着はPS戦へ。PSは両GK、とくにクレインズの脇本侑也選手を褒めるしかないでしょう。先行されるなかメンタルを強く保ち、その後のシュートを止め切って逆転勝利に導いた彼の心理を考えると、いくら言葉で飾っても足りない深いものがあるはず。本当に素晴らしかった。先日もアニャンでのPS戦で5人全員を止めていたので可能性は結構あるかも……と思っていたけれどもその通りの結果でした。

クレインズは直近のアジアリーグでもこの大会に合わせて状態をグンと上げてきていたし、一発を狙ってきてるんではないかなと思っておりました。その通りにコンディションとモメンタムを合わせてきた斎藤毅監督の手腕はお見事。3連覇がかかる決勝でのクレインズの戦いぶりは楽しみです。

1-4から追いついたアイスバックス。延長、生江の衝撃的ゴール。激戦でした

第1試合とはうって変わって、お互い点を奪いに行ったフリーブレイズvsアイスバックスの試合。

東北フリーブレイズはGK畑享和の安定したセーブもあって第2ピリオドを終えて1-3、さらには篠原亨太が4点目を奪ったところで、「ああ、これで決まったかな」と思ったのですがそこからあんな展開が待っているとはいざ知らず。

試合残り10分、ここからのアイスバックスの巻き返しは見事でした。その前の2ピリオドで攻撃の詰めの部分がかみ合っていない印象があったんですけれども、最後の最後アドレナリンが出て一気にスイッチが入りましたね。逆にいえばそれまで抑えていたフリーブレイズ大久保監督の戦術も見事だったということなんだろうけれども。
そこからのアイスバックスの攻撃は普段アジアリーグでやっている形をさらに洗練させたような感じで、氷上の選手みんなゾーンに入っていたような印象すらあり。6人攻撃を仕掛けてからも鈴木雄大の2点目となるゴールで追いついたときは、「これは大津晃介の大会になるか鈴木雄大の大会になるか」すら思ったのですが、読み違えました。

今年こそ頂点を掴めるか? フリーブレイズ

延長でのフリーブレイズ・生江大樹選手の決勝弾はとにかくお見事でした。自分でパックをもって上がってから横に動いてDFのマークを外しさらにパックを右から左にぐっと動かしてシュートコースを見つけ、打ち抜く。一連の動きがエレガントで何度リプレーを見ても素晴らしいゴールとしか。あの、最後にぐっと横にパックを動かすという動作がミソで、あれでGKはどうしても対応が難しくなるんですよね。
4年連続の決勝進出を導いた見事なプレーだったと思います。クレインズ相手にも一歩も引かず、勝負してほしいですね。

全日本選手権が行われている長野・ビッグハット

最後にポタやんからひとこと

決勝はこれで3年連続でクレインズvsフリーブレイズとなりました。全日本選手権を見るたび思うのですが、着実に新しい選手が出てきて成長の跡を見せてくれるんですよね。そういう意味で今年の試合も大いに楽しんでいます。今年は最後、誰の大会になるんでしょうか。

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