試合に出られない主将が感じた……岩本和真が見る横浜グリッツの「課題と希望」
アジアリーグアイスホッケー 12/11(日) KOSÉ新横浜スケートセンター
横浜グリッツ 1(0−3、1−2、0−2)7 レッドイーグルス北海道
取材・文・写真/今井豊蔵
トップリーグ参戦3年目となる横浜グリッツは、未だに100年近い歴史を誇るレッドイーグルス北海道には勝ったことがない。2020年にアジアリーグ・ジャパンカップに参戦し、10月10日に迎えた初めての試合は当時の王子イーグルス相手に1−8の完敗だった。そのシーズン6連敗、昨季は前後期合わせて8連敗、そして今季もここまで4連敗と黒星が続く。
11日の試合はフェイスオフ直後、グリッツが試合のペースを握った。前へ早くパックを運ぶというチーム方針の通り、何度も好機を作った。ただ、それが続かない。第1ピリオド9分1秒にレッドイーグルスのFW入倉大雅のゴールで先制を許すと、失点を重ねた。グリッツは第2ピリオド10分50秒、FW角舘信恒がゴール前でリバウンドを叩き得点したものの、この1点が精一杯。終わってみれば1−7という大敗で、シュート数もレッドイーグルスの43本に対し25本。文字通り試合を支配されての完敗だった。
いい時間が続かない…「いいプレーをしたあとミスして失点してしまう」
試合後、グリッツ主将のFW岩本和真は「いいホッケーをできている時間帯もある」と口を開いた。ただ、結果が伴わない理由も感じている。「いいプレーをしたあとミスして失点してしまう。そこが課題だとはずっと感じています」
前日のいい流れを引き継げなかった。10日の試合は2-3という接戦。3点を失ったところからFW松渕雄太、DF三浦大輝のゴールで追い上げた。第2、第3ピリオドはレッドイーグルスを上回るシュート数を残し、場内を沸かせた。
岩本は言う。「タイトなゲームになるには相手どうこうもある。ただうちはやっぱりミスが多いんです。相手にパックを渡してしまえば、どうしても内容も落ちてしまう。昨年から連戦のどちらかが良くて、どちらかがダメということが多いのはわかっている。準備不足なんだと思います」。戦力不足がはっきりしていた昨季は、どちらかといえば引き気味にしっかり守ることがスタートだったが、今季はパックを素早く前に運ぼうというホッケーを志向している。よりレベルの高いチームを目指しているものの、まだ結果が伴っているとは言えない。
「どんどん前に動けているときは、しっかりプレッシャーもかけられている。それをどう続けるかが次の課題」
15日から全日本選手権…バックス優勝の経験から言える「何が起こるかわからない」
この連戦、岩本はベンチ入りしたものの試合出場はなかった。10月1日のHLアニャンとの試合で右手を骨折して戦列を離れ、練習には復帰したものの試合出場まではもう少し時間がかかる状態だ。この間はスーツを着てベンチでアドバイスを送り、スタンド上層席に座ってネット中継の解説を務めることもあった。もどかしさを抱えながらも、視線は先を向いていた。
「ケガの時こそチャンスだと考えていました。選手のクセなんかも見えた2ヶ月半だったと思います。その知識を生かしていけたらと思っています」
15日からは、アジアリーグと並ぶもう一つのタイトル、全日本選手権が長野で行われる。グリッツはアジアリーグの5チーム中唯一、1回戦から参戦する。今季チームではアジアリーグのプレーオフ進出と並んで、全日本選手権の優勝を目標に掲げ戦ってきた。11日の試合後、ロッカーで岩本は選手たちに「気持ちをリセットしよう」と声をかけたのだという。
全日本選手権はアマチュア社会人チームや大学生とも戦う「無差別級」のトーナメントだ。一発勝負では「何が起こるかわからない」という岩本の言葉にも実感がこもる。2014年に日光アイスバックス が初優勝を果たした際、2年目の若手としてその一員だった。2019年に2度目の優勝を果たしたときは副主将。「チームが同じ方向を向くことの難しさ」を感じていた。それを果たせたときに生み出されるパワーも目の当たりにした。
「今のグリッツも、そこを通っています。チームが良くなるスピードも、バックスの時より速いと思っています。強くなる自信は、あります」
昨年の全日本選手権、2回戦でレッドイーグルス相手にリードを奪う場面があった。今年は伝統ある大会での勝利で、あっと言わせることができるか。