4年目の開幕を迎える横浜グリッツ
三刀流FWの泉翔馬が語る「変化」と風を吹かせた移籍選手

ロシアやスウェーデンでもプレー、世界を知る泉に今季の横浜グリッツはどう映っているのか?

取材・文・写真/今井豊蔵

2チーム対抗交流戦第2戦
横浜グリッツ2(1−1、0−0、1−1)2北海道ワイルズ

ゴール:【グリッツ】池田、泉 【ワイルズ】上野、越後 
GK:【グリッツ】石田 【ワイルズ】脇本
シュート数:【グリッツ】28  【ワイルズ】33

※3on3、GWS戦を加味したオリジナルルールでの得点はグリッツ 9-2 ワイルズ

対ワイルズ交流戦、勝ち越しゴールの泉が語る「チームを変えつつある選手」

9月16、17日に新横浜で行われた北海道ワイルズとの交流戦。
横浜グリッツにとってはアジアリーグ開幕を見据えた最終調整でもあった。チーム創設から所属したメンバーに引退や移籍が相次ぎ、大きく構成を変えて迎える創設4年目のシーズン「前例のないサプライズ」を掲げての準備状況はどうなっているのだろうか?

第1ピリオドに4点を奪った初戦と違って、先制したのはワイルズ。第1ピリオド1分24秒に、ゴール前にこぼれたパックをFW上野鉄平(うえのてっぺい)が振り向きざまにグリッツのゴールへ叩き込んだ。ただグリッツも、同11分45秒にFW池田涼希(いけだあつき)のゴールで同点。シュート数も互角で、一進一退の攻防が続いた。

一時2-1の勝ち越しとなるゴールを決めベンチへ凱旋する泉

再び試合が動いたのは第3ピリオドだ。11分28秒、ゴール左前で待つグリッツFW泉翔馬(いずみしょうま)のもとに、今季新加入したFW大澤勇斗(おおさわゆうと)から絶好のパスが来た。
「お膳立てが出来すぎてて、逆に緊張しました。氷が悪くて、実はパックが立っちゃってたんですよね」という泉がこれを決めて2ー1と勝ち越し。ただ13分58秒に、レッドイーグルスのマネージャーからワイルズの選手に転じたFW越後智哉(えちごともや)のゴールで同点とされ、連勝はならなかった。

浅沼芳征(あさぬまよしゆき)監督は60分間で見れば1勝1分で終えたシリーズを「決して楽観はしていません。それでも確実にチーム力は上がっている。いいピースが揃っていると思っています」と振り返った。
泉も「去年移籍してきたときは、肝心なところで取り返しのつかないミスをしてしまうチームという印象があった。まだ経験値の足りない弱いチームだったと思うんですが、だいぶ変わってきたと思います」と進歩を口にする。

そこで大きいのが、昨季はレッドイーグルス北海道でプレーし日本代表として実績も豊富な大澤の加入だ。
攻めも守りもできる大型FWは、周囲の選手まで変えられるだけの経験を併せ持つ。グリッツがアジアリーグでは3チーム目の所属となる泉も「僕もいろんなベテランを見てきましたけど、伝え方がうまいんです」。
敵陣に攻め込む時、まず最初に飛び出して相手選手に絡み、パックを奪いにいくのが泉のポジションだ。そこで大澤からは「スピードとスキルを活かすには、とにかく球際で粘ること。1対1で勝てなくても、引き分けでいい。ミスがミスじゃなくなるから」と言われ視界がパッと開けたという。

デュアルキャリアにも様々な形、泉がこなしている「三刀流」とは

泉は苫小牧工業高に在学中に、ロシアを中心とした国際リーグ・KHLのアドミラル・ウラジオストクからドラフト指名を受け、ロシアやスウェーデン、デンマークでプレーした経験がある。アジアリーグでも王子とクレインズに所属した。その中で毎年課題だったのが、シーズン後半にならないとポイントを稼げないことだった。昨季も後半にFW岩本和真(いわもとかずま)、池田と組むセットになってから、明らかにアイスタイムが増えた。4ゴール10アシストで、初の2桁となるシーズン14ポイントを挙げた。

「今年は頭から結果が出たのはよかったです」と泉。
試合数が32試合に減るものの「2桁ゴールを最低ラインに考えています」と大きな目標を掲げる。パワープレーのスペシャルセットでも起用されており、「細かいスケーティングがうまい選手で、コーナーでの粘りもある。相手を疲れさせるプレーをしてくれている」と浅沼監督をはじめ首脳陣からの期待も大きい。

グリッツ若手の成長のために、とあえてワイルズのFWとして出場した平野

強烈なメッセージも受けた。オフの間、チームのコーチを務めていたFW平野裕志朗(ひらのゆうしろう)が、17日の試合には相手チーム・ワイルズの一員として出場。北米2部のAHLでポジションを争っているだけのパワフルなプレーを見せた。グリッツ選手へのチェックは本番さながら。ボードに突っ込む際の大きな音は、なかなかアジアリーグでは聞けないものだった。

平野は「今日はゴールというよりも、当たりを見せようと思っていた。試合を上から見ていても、戦いなんだという部分がもっと出てこないと、強くならないと思うので」と、グリッツの課題を口にする。「これは日本のホッケー界全体に言えることですが、リンクの中に上下関係を入れてはいけない。先輩だから強く(チェックに)いけないとか、そういうのを無くさないと。練習でも『遠慮せずに来いよ』っていつも言っていますから」(平野)。
戦う姿勢こそが、グリッツ上位進出の鍵だと熱っぽく語る。

横浜グリッツのアジアリーグ開幕戦は9/23(土)。アウエー八戸での対東北フリーブレイズ戦だ

また、チームが掲げる「デュアルキャリア」にも、年数を経て様々な形態が現れている。泉は税理士法人に勤務しながら、難関資格獲得への勉強も進めている。「三刀流という言葉がぴったりかもしれませんね…。時間をいかに作るかが勝負なので」と、試合で遠征の際にも勉強の資料を開いているのだという。続けて「大変ではありますけれど、もはや時間が空いていると落ち着かないというか。勉強のプレッシャーもあるので……」と笑う。

今季、交流戦8試合で対戦するワイルズは、昨季のひがし北海道クレインズの経営難や給与遅配問題から生まれたチーム。2年前までクレインズに在籍した泉にとっては、共にプレーした選手が大半だ。
「遅配問題は僕も当事者なので……。僕はクレインズ も釧路も好きでしたし、今は選手にとっていい方向へ向きかけているようにも感じる。来季は一緒のリーグでできればと思います」。
浅沼監督も「我々は同じリーグ戦だと思って、交流戦も全力で戦います。それだけの実力があるチームですし、来年は同じリーグでできるようになると信じていますので」と口をそろえた。
リーグは大きな問題を抱えたままスタートするシーズンとなるが、選手もスタッフも氷上に注目を集めるべく、戦っていく。

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