【Game4リポート】築き直したディフェンス。
「いつも通り最高な」成澤のセーブでレッドイーグルスが完封逆王手
アジアリーグアイスホッケー プレーオフファイナルGame4
3/23(木) 韓国・アニャンアイスアリーナ
HLアニャン 0(0-1、0-0、0-0)1 レッドイーグルス北海道
ファイナルシリーズは両チーム2勝2敗のタイ
取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部
崖っぷちレッドイーグルス、ゲームプラン変更で息を吹き返す
魂で1点を守り抜いた。
HLアニャンがシリーズ2勝1敗と優勝への王手をかけて迎えたアジアリーグアイスホッケーのファイナルGame4が韓国・アニャンアイスアリーナで行われた。
HLアニャン優勢との声も聞こえるなか、崖っぷちに追い込まれていたレッドイーグルス北海道は第1ピリオド開始直後にパワープレーのチャンスを得ると3分05秒にキャプテン・橋本僚のゴールで先制。その後は、虎の子の1点を60分間守りぬき1-0で勝利。シリーズ対戦成績を2勝2敗のタイとし、アジアリーグ王座奪還へ向けて逆王手をかけた。
Game4は前の試合とはうって変わって、試合開始直後にレッドイーグルスがペースを握った。しっかりパスをつないで相手のアタッキングゾーンに入りこみシュートまでつないでいく。
先にビッグチャンスを演出したのはレッドイーグルス。
入倉大雅がディフェンス(DF)を1人かわすと至近距離からシュート。これはアニャンGKマット・ダルトンに防がれたが、アタッキングゾーン内でのフェイスオフを獲得しさらなる攻勢につなげる。その後も相手アタッキングゾーンへの進入時には高橋聖二が積極的にフォアチェックを仕掛けていくなど前戦での重さを全く感じさせない動きの良さを見せる。高橋は強烈なDFのマークにあい激しくチェックされることも多かったが、平然と立ち上がりさらに前へ前へと突き進んでいく。「狙って来ているのは分かっているし、相手をイラつかせるそういったプレーが持ち味なので。勝利のためならいくらでも身体を張りますよ」という高橋のプレーがレッドイーグルスへと試合の流れを引き寄せはじめる。
すると第1ピリオド2分14秒、左フェンスぎわの争いでその高橋がボードにたたきつけられてこの試合両者初となるペナルティ。レッドイーグルスはパワープレーを獲得した。
レッドイーグルスはこの好機をしっかりものにする。「このシリーズここまでパワープレーのチャンスが少なかったので、このパワープレーは必ず決めると。僕だけでなく5人全員が必ずシュートして終わるというイメージを共有できていました」と橋本僚キャプテンが語るように、ここでレッドイーグルスは分厚い攻撃に出た。
ゴール前を固めるHLアニャンの守備陣を翻弄するかのように外側で大澤優斗から中島彰吾、橋本僚とリズムよくパスを回す。そして最後は橋本→中島→橋本とパックを横に大きく動かしてGKのポジショニングをずらすと、ゴール正面の位置から橋本がワンタイマーでスティックを一閃。放たれたパックはDFのすきまを切り裂きゴールネット右上隅に突き刺さった。
「あの形はセットプレーのオプションの1つ。相手の守りの特徴として低い(ゴールに近い位置で守る)のでそこでしっかり上(遠目の位置)からシュートを打とうと。そのためにゴール前で粘り強くスクリーンをかけてくれている味方がいたので、打つコースもあそこしかないという場所にタイミングを合わせて打てました」(橋本)
橋本キャプテン自身も、残り2試合の勝敗を左右するのはパワープレーとショートハンドだと語っていたが、アニャンが見せたわずかなほころびを突いて先取点をあげたのはさすがだった。
いっぽう、先制されたHLアニャンもこの日この試合で優勝を決めるべく、レッドイーグルスへの圧力を徐々に高めていく。
しかし、守るレッドイーグルスはGK成澤優太を中心に1点も与えずこの試合を終えようという思いで結束していた。
「痛みを恐れずに身体を張ってシュートブロックをしてくれたり、最後まで相手にしっかり追いついて思うようなプレーをさせなかったりと守りについているみんなからの気持ちが伝わってきました。今日は危ないシーンからのシュートもなかったですし、ゴールまでパックを届けさせなかったプレイヤーの勝利だと思います」と成澤。
3/23(木)に開催されたファイナルGame3では、要所要所でゴール前の相手を捕まえきれないなど守りのほころびを見せ、レッドイーグルスは今季HLアニャン相手に最多の5失点。しかしその完敗だったGame3の反省をチームは見事に生かしていた。
「木曜日が終わったあとでも、もう後がないというような気持には追い込まれてはいなかった」とレッドイーグルス菅原監督はディフェンスの再構築に着手。
「向こうの攻めだしの形をどう抑えるかと、相手のフォアチェックを受けないためにどうするかについてフォーカスしてプランを変更した。それをしっかり選手が実行してくれてうまくハマりました。ブレイクアウト(攻めだし)から良い形で出ていけることが多くなり、いい流れをつかめた」と監督はこの日の勝因を振り返る。
「前日朝の練習の後に『いつも通り元気出して、楽しんで戦おう』と声をかけたが、選手たちはその通りのびのびと戦ってくれました」(菅原監督)
ホーム、HLアニャンの優勝を期待してやまないファンが詰めかけて満員となった韓国・アニャンアイスアリーナは試合前からボルテージが上がりっぱなし。ひとたびHLアニャンのチャンスとなれば歓声がリンクを埋め尽くしレフェリーのホイッスルもかき消されるような状況だったが、レッドイーグルスの選手たちは落ち着いてやるべき仕事を遂行。試合開始直後のパワープレーという唯一といってもいいチャンスをものにすると、その後は57分間を徹底的に守り抜き、会場のHLアニャンファンを沈黙させた。
HLアニャン攻撃陣をしてこの試合はほぼノーチャンス。アニャンの攻撃力を徹底して抑え込んだことが、レッドイーグルスが主導権を握る一番大きなポイントだった。
この日虎の子の1点を挙げた橋本キャプテンも「木曜日の試合から修正をしっかりできて、先制点からあとも、追われる展開のなかで引くこともなく相手にプレッシャーをかけ続けることができた。決定的なピンチを迎えることもなく、やるべきことをでき、こういう風にしたいという展開にうまく持って行けたゲームだったと思います」と振り返る。
そして、もう1敗もできない状況の中で、レッドイーグルスGKの成澤優太のゴールティンディングはほぼ完ぺきだった。特に試合最後の10分間はHLアニャンの攻撃が続き、成澤はシュートを受け続ける形となったが最後までほころびを見せることなくゴールマウスを守り切った。
試合後、成澤の今夜の出来について聞かれた菅原監督は「いつも通りですね。とても落ち着いてプレーしていた」と、間髪入れずひと言。
「今日だけすごく良かった、というわけではなく彼はいつも良いので。でもこの大一番で完封してくれたというのは決戦に向けてよい勢いで臨める。簡単な試合にはならないと思いますが、チームに力を与えるプレーだったと思います」(菅原監督)
そんな、“いつも通りに、最高”のプレーを見せた成澤は、
「試合前のミーティングから前日までの修正点を振り返って、それを生かせた試合だったと思います。負けられないという気持ち以上にハードなマークがみんなできていた試合でした。僕自身は木曜に5失点しましたが、体調不良からの復帰戦ということもあり準備段階から気持ちが入りすぎていて、パック保持者へのフォーカスに集中しすぎて周りが見えていなかったのかな、と。そのあたりを気持ち的にも修正して今日は視野を広く持って臨めて、1発目のシュートは全部止められたと思うし、1-0というキーパーにとって最高の試合ができました。明日は相手も研究してくると思うけれども、いつも通りのプレーを心がけて、1本1本のシュートに集中して臨みます。それに尽きると思います」(成澤)
「今日は両チームともお互いにいいプレーだった。この内容で第5戦も戦えればいい試合になる。今日見えた課題を踏まえて明日の試合にぶつけるだけ。明日も今まで通り全員で戦います」(菅原監督)
一方ホームリンクでの優勝決定はお預けとなったが、高い攻撃力を誇るHLアニャンのメンバーも譲るつもりは全くない。どちらが勝ってもチャンピオンが決定するGame5は3/26(日)16:00にアニャンアイスアリーナでFaceOffされる。