ルーキー大久保雅斗の初ゴールに見えた「変わるレッドイーグルス」 
HLアニャンに勝つために……新監督が伝えたメッセージ

早くも2試合目でのアジアリーグ初ゴール。ベンチに戻る大久保雅斗選手は笑顔で仲間とハイタッチ(写真:今井豊蔵)

取材・文/今井豊蔵  写真/今井豊蔵、アイスプレスジャパン編集部

パワープレーでも起用の大物ルーキー「叩くだけだったので」

 2025-26シーズンのアジアリーグが9月6日に開幕し、各チームは順に初戦を迎えている。14日、日光霧降アイスアリーナではレッドイーグルス北海道が日光アイスバックスに3-2で競り勝ち、今季2戦目で初勝利を挙げた。第2ピリオド6分40秒にアジアリーグ初ゴールを決めたのが、東洋大から入団したルーキーFW大久保雅斗だ。終盤、アイスバックスの6人攻撃で2点を失ったことを考えれば、まさに値千金の3点目だった。

「めちゃめちゃうれしかったです」

 そういう大久保は、右目のまぶたを赤く腫らしていた。「髪の毛が入っちゃって、ものもらいなんです」。手元に戻ってきた記念のパックとともに、忘れられない1日となった。

 敵陣でパックをキープし、波状攻撃を仕掛けて生まれたゴールだった。DF武部太輝がブルーライン付近から打ったシュートがリバウンドとなってゴール前に出たところに、大久保はすかさず飛び込んで小さなモーションからシュート。大きなガッツポーズを見せ、仲間の手荒い祝福を受けた。「僕のところに来たときには叩くだけだったので」と、先輩のサポートに感謝する。

 ルーキーながらパワープレーでも起用されている。小川勝也監督には「自分が勝ち取ったものだから、自信を持ってやれ」と言われているという。「使ってもらっているので、ゴールは1試合目から狙っていた。まずは初ゴールできたのは良かったです」。センターながら、シュート力に自信を持っており「自分はパサーよりもシューターだと思っているので。極力積極的に打つようにしています」。磨いてきた嗅覚が生きたゴールだった。

「同期には負けたくない」と今シーズン通じての活躍を見据える

 チームに合流してからの3か月は、学生との違いを感じる日々でもある。「体の強さや攻守切り替えのスピードが全然違う。センターなのでもっと速くすることは意識しています」。かつてDFとして、西武鉄道やアイスバックスでプレーした父・智仁さんからも指摘されているポイントだという。

 この日は相木隼斗、三浦稜介と4つ目のFWラインを組んでの出場。「少しでもいい流れを、上のラインに持っていければ」と役割は心得ているが「同期には負けたくないんです。新人賞、狙っています」と本音ものぞかせる。昨季はイタリアでプレーしていた、東洋大の1年先輩にあたるFW中島照人にも「同期…ではないですけど、同じFWとしてポイントは負けたくない」。これがルーキーFWでは、全チームを通じて初のゴールという勝負強さも併せ持つ。

 今季から指揮をとる小川監督にとってもうれしい初勝利となった。「昨日の初戦はいいところを全く出せなかった。きょうはゴールへもっともっと強くプレッシャーをかける意識で、ファーストピリオドからいい入りができた」。特に第2ピリオドまではアイスバックスにほとんど仕事をさせなかった。そして開幕カードでわかる、昨季までとの変化もあった。

4セット回しに新監督が込めたメッセージ「必ず必要」

堅実な守りを見せアジアリーグ初勝利を挙げたGK佐藤永基選手。小川新監督の起用に応えた(写真:今井豊蔵)

 これまでのレッドイーグルスは、特にシーズンが進むにつれて使うセットをはっきり絞っていく傾向があった。それがこの日は、4つのセットに満遍なくプレー時間を与えた。どんなメッセージが込められていたのだろうか。

「今季は足を使って、相手にスペースを与えない守備から試合を作っていこうと思っています。1試合2失点までと、はっきり数字でも伝えています。目標としているプレーを遂行するには、運動量が必要。最後は第4セットまで必ず必要になると考えています。長いシーズンでは目先の1勝よりも、アジアリーグ制覇に向けて成長してもらえるような起用をしたい」(小川監督)

GK起用にも変化が見える。開幕戦をベテラン成澤優太で落とすと、2戦目の先発に起用したのは2年目の佐藤永基。白樺学園高、東洋大時代からずっと日本代表入りしてきた選手だが、昨季は3試合しか出番がなかった。この試合が、アジアリーグ初勝利だ。

ここでも「GK3人をフラットに、私の目で見て判断したかった」と指揮官。小野田拓人のコンディションが整わず出遅れたことはあるが、プレシーズンマッチで、佐藤は成澤に負けないパフォーマンスを見せたと判断した。開幕カードで1試合ずつ起用するのは最初から決めていたという。

この日のレッドイーグルス北海道は堅い守りが光り前日の雪辱を果たした

「独特の雰囲気がある日光で、プレッシャーはあったと思いますよ。でもファーストショットから安心して見ていられたので」。当面、1人のGKをメーンに据えるのではなく、それぞれにチャンスを与えながら起用していく方針だ。

アジアリーグが再開されてからの過去3シーズン、レギュラーシーズンではずっと2位。プレーオフでもHLアニャンの後塵を拝し続けている。「自分たちのいいところだけでなく、相手のいいところを削るプレーもホッケーでは絶対に必要です」と小川監督。持てる戦力を使い切り、今度こそアジアの頂点に立つためのシーズンが始まった。

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