6ピリ突入、リーグ史上2番目の長時間ゲームを制しアニャンが先勝
「負けてしまったら明日に影響」

ファイナルは第1戦からトリプルオーバータイム突入の激闘に。どこまでもつれるのか予測すらつかない

取材・文・写真/今井豊蔵

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン
3月30日(土) プレーオフファイナル 第1戦@苫小牧・nepiaアイスアリーナ
レッドイーグルス北海道 3(0-0、1-0、2-3、0-0、0-0、0-1)4 HLアニャン

ゴール:【レッドイーグルス】入倉2、中屋敷 【アニャン】ソン・ジョンフン、シン・サンウ、ナム・ヒドゥ、チョン・ジョンウ
GK:【レッドイーグルス】成澤 【アニャン】ダルトン
シュート数:【レッドイーグルス】57 【アニャン】51

4セット組めないレッドイーグルス、しのぎにしのぐも力尽きる

実に第3オーバータイム、103分35秒にまで持ち込まれた戦いの終止符は、静かに打たれた。

サードオーバータイム(第6ピリオド)3分すぎ、HLアニャンはDFナム・ヒドゥがパックを持ってリンク左サイドを駆け上がり、続いてゴール左へ飛び込んできたFWチョン・ジョンウにパス。これをイーグルスDFに絡まれながらもゴールにねじこんだ。

圧倒的多数のレッドイーグルスファンが言葉を失ったリンクで、殊勲のチョン・ジョンウにアニャンの選手が殺到。プレーオフ・ファイナル初戦を制した喜びを分かち合った。

HLアニャンの選手たちのこの表情がすべてを物語る。決着は20分x5ピリオド+3分だった

ほぼ2試合分に迫ろうとするプレータイムは、リーグ史上でも2番目のロングラン。

2018-19シーズンのプレーオフ準決勝で、クレインズとデミョンが戦った113分3秒に次ぐものだ。

殊勲のチョン・ジョンウも試合後は「昨年のプレーオフで第5ピリオドはありましたけど、こんなに長い試合はホッケーをしてきた中で初めて」とさすがに疲れた表情だ。ただ「ゴール後の記憶はあまりないです」というほどの喜びが、体の重さを吹き飛ばしてくれた。

「ゴールを入れることができて気分はいいですよ。チーム全員が最善を尽くして願っていた結果を、私が最後に決められたからです。チーム全員の、勝利を切実に願う気持ちを集めた結果です」とチョン・ジョンウ。

さらに試合時間がどんどん伸びていく際の心境を「私たちがしんどいのと同じように相手もしんどい。もし負けることになれば明日のゲームの流れにも影響する。はやく点数を取らなきゃという思いは強かった」と口にする。2年連続のアジアの頂点へ、大きな先勝だ。

決勝ゴールを決めたチョン・ジョンウはベンチで吠えた

地元の利を生かして、レッドイーグルスは巻き返せるか?

試合は第3ピリオドに激しく動いた。レッドイーグルスの1点リードで突入したが、アニャンが2分56秒にFWソン・ジョンフンのゴールで同点。その後も両チーム2点ずつを奪い延長に突入した。

プレーオフはレギュラーシーズンと違い、延長でも通常の20分のピリオドを勝敗がつくまで戦う。

特殊なゲームマネジメントが求められる状況をレッドイーグルスの荻野順二監督は「うちは今日4セット組めなかったので…体力的に向こうが優位に立つことはわかっていた」と振り返った。

3セット+DF2人、FW2人という布陣。さらにFW彦坂優は久々のベンチ入りで滞氷がなかった。延長が長く続くにつれ、アニャンがパックをキープする時間が長くなっていった。

我慢くらべの時間が続き、レッドイーグルスはGK成澤が好セーブを重ねてしのいだ。

荻野監督は「5ピリ、6ピリはガツガツいかず、トラップを使って体力を温存したり、集中するポイントを絞ろうという話はしていた」というゲームプランを立てていた。その通りに進んだが、疲労は選手の動きに重くのしかかる。わずかな差が勝敗を分けた。

先週末のレギュラーリーグ最終節でアニャンに連敗したのを受け、レッドイーグルスはとにかく失点を減らすことを念頭に試合を進めた。

荻野監督は「第1、第2ピリオドは自分たちのペースでやれていた。もちろん簡単に勝てるゲームではないのですが、モノにできるゲームではあったと思う。そこで勝ちきれないのには色々な要因がある」と、悔しさを隠そうとはしない。

第2戦に向けては「切り替えるしかない。今から言ったところで何を変えられるモノではない」と覚悟を口にする。

アニャンがつかんだ勢いが上か、レッドイーグルスの切り替えが功を奏するのか。

リーグ史に残る激闘はこのプレーオフに何をもたらすだろうか。一筋縄ではいかないことだけは確かだ。

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