デミョン・キラーホエールズ解散。韓国アイスホッケーが突き当たる壁
取材・文・写真/今井豊蔵
アジアリーグ・アイスホッケーに2015-16シーズンから参加してきたデミョンキラーホエールズは、3月31日をもって全選手、スタッフとの契約を終え、チームを解散すると発表した。
デミョンの親会社はリゾート経営を主たる事業範囲としており、新型コロナウイルスの感染拡大で経営環境が悪化。開幕前からチーム運営を今季限りとし、他企業への譲渡を目指してきたが叶わなかった。
デミョンは参入からの2シーズンこそ9チーム中8位に沈んだものの、17-18シーズンからNHLサンノゼ・シャークスなどを率いたケビン・コンスタンチン監督を招き、個人スキルだけでなくチームとして戦う姿勢を明確にしてきた。
GKアレクセイ・イワノフらを得た18-19シーズンにはレギュラーリーグ優勝のタイトルを奪取。プレーオフはセミファイナルで日本製紙クレインズに敗れたものの、釧路で行われた第1戦は第6ピリオド13分3秒に決勝点を許すまでまで、113分強という『アジアリーグ最長試合』を繰り広げた。
韓国アイスホッケー協会はデミョンの解散を前に、公式チャンネルでDFキム・ヒョクら主力選手、スタッフからの「最後のメッセージ」を公開。
韓国アイスホッケー協会による「デミョン最後のメッセージ」
https://www.youtube.com/watch?v=CWejOIqKQ9E&t=136s
東北フリーブレイズやハイワンでもプレーしたキム・ヒョクはこの中で自身の現役引退を明らかにし「まだ競技生活を続けたいという選手は多い。デミョンではなくなるけれども、新しいチームができたり、ハルラやハイワンへ行く選手がいるようならぜひ応援して欲しい」とコメントした。
デミョンは先進的なチーム作りが目立った。コンスタンチン監督は「相手のいやがるホッケー」を植え付けようと、プレーシステムに関するペーパーテストを毎週のように課した。他チームから移籍した選手がシステムブックの厚さに驚くほどだった。
また今季開幕前には、北米の女子プロリーグNWHLでプレー経験があり、平昌五輪韓国代表GKだったシン・ソジョン氏をGKコーチに任命、成人男子チームを指導する韓国初の女性コーチとして注目を集めた。
一方で、創設以来本拠地としてきた仁川のリンク(ソンハク国際アイスリンク)と賃貸条件で折り合えず、19-20シーズン前にソウル・モクトンのリンクへの移転を発表。このリンクが同シーズンほぼ改修工事で使えないなど、興業運営では不利な条件を強いられてきた。
3月下旬から、デミョン所属だった選手も含めて韓国代表が招集され、8月にオスロで行われる予定のの北京五輪最終予選に向けたトレーニングを積んでいる。ただ来季アジアリーグを行えるとしても、韓国からの参戦は現状ハルラ1チームだけで、アジアリーグが誕生したときの水準に後退してしまう。
すでに、現役代表の中にプレーするチームがない選手もいるなど、世界ランキング18位まで駆け上がってきた代表の競技力にも影響を与えるのは必至で、協会による対応策が待たれる。