「やっぱりホッケーって楽しい」 
暗闇から帰ってきたバックスFW出口圭太が今季初得点

得点を決めてベンチに凱旋する出口選手。復帰後初ゴールはブレイクアウェイからの値千金の一撃だった

取材・文・写真/今井豊蔵

アジアリーグアイスホッケー2023-24シーズン
12/23(土)@KOSÉ新横浜スケートセンター 観衆:1115人
横浜グリッツ 4(0-2、1-1、3-2)5 H.C.栃木日光アイスバックス
ゴール:【YGR】杉本、ホートン3【NIB】宮田、寺尾2、清水、出口
GK:【YGR】古川【NIB】福藤
シュート数:【YGR】40【NIB】33

「気持ちも体も、ホッケーをやれる状況ではない」ところからの帰還

全日本選手権で優勝を果たした栃木日光アイスバックスが勢いで押し切るかと思われた試合は、終盤にもつれた。2点リードで突入した第3ピリオド、12分、13分とグリッツの新外国人FWジェイク・ホートンに連続ゴールを許して同点とされたアイスバックス。
16分にFW寺尾勇利のゴールで引き離した直後だった。FW出口圭太はニュートラルゾーンでパックを拾うと、そのまま敵陣へ。グリッツGK古川駿の左肩を狙いすましたかのように打ち抜くミドルショットを決めた。今季初ゴールで5-3。この後、ホートンにハットトリックとなるこの日3点目を決められ、5-4まで追い上げられたことを考えれば、まさに値千金のゴールだった。

出口選手のゴールシーンアジアリーグアイスホッケー公式Xによるハイライト映像↓

「試合の流れがどっちつかずでしたからね。僕自身決めたかったですし、いいところで決められて良かった」と出口。
3-3の同点とされたところでは、はっきりベンチの空気が「落ち込んでいましたね」と振り返る。重さを振り払う一撃の重さは、チームメートが誰よりもわかっていた。試合後のロッカーではハードハットを受け取り、笑顔を見せた。

 昨年8月、チームから出口について意外な発表があった。「コンディション不良による長期離脱となります」。本人の言葉を借りれば「気持ちも体もホッケーをやれる状況ではなかった」のだという。家族の支えもあって、ようやくリンクに戻れたのは10月のこと。すでにシーズンは開幕していた。

値千金のゴールも「足がついてこないんです」気づいたファンの支え

コンディション不良を乗り越え、氷上へ戻ってきた出口選手。今季残り14試合を全力で駆け抜ける

「いろいろ気分転換に連れて行ってもらったり、リフレッシュさせてもらった。支えてくれた両親のためにも頑張ろう」と思ってのシーズンイン。ただ最初はランニングをするだけでもつらかった。選手生活を続けられるのかという不安もあったが、実際に氷に乗れば「やっぱりホッケーって楽しいなって、考え方も変わったんです」。練習でシュートを決めたり、持ち味のハンドリングスキルを発揮するたびに、少しずつ前向きになっていった。

現在のコンディションはまだ60パーセントというところ。「足がついてこないんです」と笑う。今季はプレーオフへの出場権が2チームに減り、現在アイスバックスは2位のレッドイーグルスと勝ち点21差。残り試合が2試合多いとはいえ、もう負けられないところまで追い込まれている。

「自分よりチームの勝ちを優先してやっていきたい。プレーオフに出られるように、自分にできることをやっていきたい。その中でゴールできればいいですね」

 本拠地の霧降アイスアリーナでは、リンクわきにある緑の非常口灯の上にいつも「出口」と書かれた小さな応援幕がある。自らが氷上にいない間も続けられた、洒落の効いた後押しには最近気づいた。「福さん(福藤)が教えてくれて。最初は分からなかったんですが、ありがたいですよね」。シーズン終盤、家族とファンに感謝して駆け抜ける。

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