【プレーオフFinal Game5】レッドイーグルス北海道・菅原宣宏監督インタビュー全文掲載

アジアリーグプレーオフファイナルを戦い抜いたレッドイーグルス北海道のメンバー

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

記者:まず今日の試合の総括からお願いします
菅原監督:よくやったんじゃないですかね。なかなか良いチャンスを作れなかったというか、(相手に)作らせてもらえなかったですけれども。
でもゲームプラン通りに選手がやってくれて、ロースコアの展開に持ち込めたんで。最後はハルラ(※HLアニャン)の得意な得点パターンで決められました。ハルラは強かったです。

※菅原監督はハルラと発言されていたため、尊重しそのまま表記します

記者:これで今季2022-23年シーズンが終わりました。率直な気持ちをお聞かせください。
菅原監督:今シーズン、本当にレッドイーグルス北海道としても、運営面でも、たくさんのファンの人に会場に足を運んでもらえてたくさん声援を受けて、本当に応援してもらえているということを感じられたシーズンでした。
ハルラと戦えることをすごい楽しみにしていて。木曜日に3戦目(Game3)で負けて、なんとか5戦目(Game5)まで行きたいなと思っていたんですけれども。
本当に選手は、1試合ごとに成長してきたのを本当に感じて、4ピリ5ピリ(※)といつまで長く(試合を)やらせてくれるのかな、と思っていましたけど。
最後本当、向こうは4つ回し、うちは3つ回しだったのでその差も出ました。
でも最後まで今シーズン積み上げてきたものとか試行錯誤しながら積み上げてきたものを出せて良かったなと思いますね。やっぱりレギュラーシーズンの戦いをものすごく大切にしてきたので、それが最後(ファイナル)まで来られたことの大きな要因だと思います。
今、選手達とも話しましたけれども、ハルラの選手たちとイーグルスの選手達の差は本当にわずか。大きな違いはハルラの監督と私の差。それは本当に大きい。そこはもうはっきりしている。
今シーズン、ハルラの練習はチャンスがあれば全部見たんですよ。練習も試合もたくさん見ましたけれども、やはりチームのコンセプトはすごく伝わってきていました。その練習のディテールは、このリーグで一番高いですし、こういう練習をしているから強いんだな、っていうのを強く感じてハルラから学ぶことは本当に大きかったですし、ハルラの監督・コーチが細かい指導をしているところを見て、本当に質が高いなと思ってました。そういうことですね。
※1stオーバータイムを第4ピリオド、2ndオーバータイムを第5ピリオドと慣用的に表現することがあります

Game4で戦況を見守る菅原監督(後列中央)

記者:3年ぶりのアジアリーグとしてシーズンが始まって感じたのは、HLアニャンのチーム力というか質の高さ?
菅原監督:やっぱりチーム力が高いですね。4セット目の若い選手たちもプレーオフでも活躍していましたし、どのセットもプレーのディテールが本当に高くて。何度も言いますけれども、練習でやっていることが本当に試合で出てくる。まあイーグルスも近いものはありますけど、やっぱり差はあるなと感じてます。

記者:第5戦しかも延長セカンドオーバータイムまでいった試合でした
菅原監督:そうですね。でも終わってみて、ファイナルを勝ち切るにはやっぱりハルラの4つ回しに対して我々の3つ回しはきつかったな、っていうのはありますけれども。それは私が選択したことなので仕方がないと思います。そこが敗因かな。

記者:今、仕方がないとおっしゃっていましたが、その選択を取ったことに後悔などは?
菅原監督:全然ないです。勝つために必要だと思っていろんなことを試行錯誤してやって決断してきました。本当に橋本キャプテンをMVPにしてあげたかったですね……。
GKの成澤も体調を崩して1戦目2戦目と出られなかったんですけれども、韓国に来てから本当に頑張ってくれて……。本当にシーズンほとんどを成澤が正ゴールキーパーとしてやってくれて安定感がありました。
若手で成長した選手もいるし、柴田はこのプレーオフでもできるっていうことを見せてくれて、最後までやってくれました。でも本当にハルラの練習をいつも見ていましたけれどもすごいんですよ。本当に大したものだと思います。

記者:この試合をもって百目木選手は引退。最後にベンチへ戻ってきた彼の肩を叩いていましたが、どんな言葉をかけましたか?
菅原監督:言葉は何もかけていないです。ドメ(百目木選手)にはいろんなことを言い尽くした。でも、12月に百目木と話しをして、今シーズン限りっていう話をして。やっぱり難しいと思うんですよね。(そんな状況の中)やり続けるのが。そんな中でも彼がいつも明るくいてくれて助かりました。以前にも話したように、彼がやってきてくれたことはもの凄いこと。そこには本当に感謝しています。

記者:試合が終わった後のミーティングで選手たちにどんな声をかけましたか?
菅原監督:今言ったようなことです。コーチたちも話しをしましたけれども。やっぱり「負けたので差があるのは事実だし、何かを持って帰ろう」と話をしました。選手たちの差は本当にわずかだから試合によっては勝てる試合もあれば、そうじゃない試合もあるぐらいの力の差ですけれども監督の差が本当に大きい、とは選手にも言いました。本当にシーズンを通して感じていたので。

記者:Game4で非常に良い形で戦術がはまって、今日はその形を引き継いでいったのか、それともまた新たな何かを加えたのか?
菅原監督:基本的なところは変えていないです。少し注意点も出しましたし、昨日の試合での課題を何点か出しましたけれども。ゲームプランとしては良かったと思いますし、選手も最後まで(そのプランを)実行しきってくれたので、そこは良かったと思います。

記者:Game4ではHLアニャンに対して、「リグループからの攻め出しのところを止める」というポイントが効果的だったと思ったのですが、今日はそこをさらに強化して臨んだ?
菅原監督:そうですね。今日もうまくできたと思います。ハルラも何か対策してくるかなと思ったんですけれども。対策はされていたんでしょうけれども、イーグルスとしてはうまくできたかなと思います。

記者:セカンドオーバータイム。本当に素晴らしい試合で、「これでどっちかに決着をつけなければならない、というのは本当につらい」と思って記者席から見ていたのですが。改めて采配しながらどんなことを考えていましたか?
菅原監督:4ピリ(ファーストオーバータイム)の最初のパワープレーで、中島のワンタイムシュート、肩口で枠へも飛んでいたし『入ったかな』と思ったんですよね。そこで(GKの)手が出てきて。時間を重ねるごとに選手の疲労の色がもう見えたので、勝たせてあげたいなと思って祈っていました。
でも実力通りだなと思いますよ。選手は本当によくやりました。悔しいっすね。悔しいけれどハルラは強かったですね。

記者:昨年までコロナ禍の影響があってジャパンカップとして戦いましたが、アジアリーグの形に戻った今季が終わりました。日本がアジアの覇権を取り返すためにこれから何が必要だと思いますか?
菅原監督:いろいろことが必要だと思います。私達のこの現場の目線で言うと、やはりハルラのようにパックの奪い合いに負けない、パックを簡単に奪われない、相手にチャンスをギブしないっていう……。そこの差を本当に痛感していて……、イーグルスも(強化に)取り組んでいますけれども、そこは大きく違うと思いますね。1回パックを渡すと、なかなか奪い返せないので。それに対してシステムをうまく使って対応していますけれども……。
ちょっと難しいですね(その質問に)答えるのが。いろんなことが必要です。

記者:橋本選手にMVPをあげたい、とのことでしたが、彼についてお聞かせください
菅原監督:普段、橋本はおとなしくてあんまりワイワイやるタイプじゃない。でもリンクにのったら本当にいろいろと目の色を変えてやりますし。本当にスマートな選手なんで。いろんなことを考えていて。
プレーオフになって、さらにファイナルになってからは本当に一気にギアを上げてきて、得点はもちろん数字で表れていますけれども、攻めも守りも本当に誰が見てもわかるぐらい、ギアを上げていい動きをしていました。
橋本キャプテンは苫小牧でのGame2が終わった後に足が軽く肉離れみたいになって。月曜日でしたか……。苫小牧では、ちょっと足を着くだけでも痛いって言っていて、トレーナーとつきっきりで治療をしたり、だましだましやりながら。そんなコンディションの中で、本当によくやってくれたなと思いますし、取らせてあげたかったですけどね。このままいけば、勝てば彼がMVPだなと思っていました。

菅原監督(後列中央)はGame5の後、「橋本にMVPを取らせてあげたかった」と語った

記者:今日の試合も第2ピリオド残り1秒でゴールした、というのはその試合の流れを変えたという印象はありました
菅原監督:第1ピリオドはあまりチャンスがなくて、第2ピリオドは少しあったんですけれどもね。(橋本キャプテンは)本当によく諦めないで最後までやりきったな、と思っていました。ファイナルで4点ってすごいですよね。ファイナル得点王じゃないですか、多分。あとは本人に聞いてください。

記者:今回強豪相手にGame5まで持ち込んだ。この点を次のシーズンに向けてどういうふうに糧にしていきたいですか?
菅原監督:やっぱりスタッフ間で話しているのは、技術のところでいくと、上っ面だけを鍛えていくのではなくて、もっと重要な心の部分を選手たちに落とし込んで、しっかりやらないといけない、と。
ハルラとはシーズン中13試合を戦って、5勝8敗。それだけの差があるので。選手も(この敗退は)悔しいと思うんですけれども忘れないで欲しいです。
去年も一昨年もジャパンカップで本当にすごい成績を残しているし、まだまだ若い選手たちもいっぱいいるんでね。彼らがなんとか成長してやってくれると思います。
<了>

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