「ヒョンたちは本当にスゴい」　大津夕聖がHLアニャンで見つけた"強さの秘密"

取材・文／今井豊蔵　写真／今井豊蔵

アジアリーグアイスホッケー2024-25シーズン
2月1日（土）　レギュラーシーズン＠神奈川・KOSÉ新横浜スケートセンター　観客数：1031人

横浜グリッツ 4（0-1、0-2、3-0、OT1-0）3 HLアニャン
ゴール：【グリッツ】杉本、ラウターx2、三浦　【アニャン】イ・ジュヒョンx2、キム・ゴンウ
GK：【グリッツ】冨田　【アニャン】ダルトン
シュート数：【グリッツ】34（6、7、19、2）　【アニャン】30（7、13、5、5）

2月2日（日）　レギュラーシーズン＠神奈川・KOSÉ新横浜スケートセンター　観客数：1260人
横浜グリッツ 3（1-0、1-1、1-0）1 HLアニャン
ゴール：【グリッツ】ラウター、畑山、池田　【アニャン】アン・ジンフィ
GK：【グリッツ】古川　【アニャン】イ・ヨンスン
シュート数：【グリッツ】21（9、3、9）　【アニャン】34（11、10、13）

グリッツに連敗したアニャン…そこで見た先輩の強さ

　ファンも選手も驚く下克上が起きた。2月1日から新横浜で行われた横浜グリッツとHLアニャンの2連戦、リーグ最下位のグリッツが首位のアニャンに連勝したのだ。グリッツは、今季新横浜で戦ったアニャン戦に4戦全勝。さらに今季、アニャンに60分勝ちを収めたのはグリッツだけだ。スタンドは騒然。グリッツの選手がパックを持つたびに大歓声が上がった。
　なぜこのようなことが起きたのか。逆の立場から聞いてみたくなった。アニャンには今季新加入した日本人DF大津夕聖がいる。中から見たアニャンというチーム、そしてアジア大会を戦う日本代表について、大いに語ってくれた。
　大津に声をかけたのは、アジア大会にまさに出発しようとしていた新横浜のロッカー前。「あんまり長くは話せないですよ。ダメですからね」。こう前置きしても、口を開けば言葉が止まらない。

「連敗しましたけど、悪いプレーをしているわけじゃないと思うんですよ。グリッツ相手にナメてるわけではないですし。ただうまくいかないときの焦りというのはあったかもしれませんね」

　昨季は北海道ワイルズに在籍した。アジアリーグへの参戦が叶わず、全日本選手権やグリッツとの交流戦など、限られた試合に状態を合わせて戦えた。だからこそ今季改めて気づかされたのが、長いシーズンには必ず浮き沈みがあることだ。

「ずっとうまくいくわけがないんです。去年は何試合かしかなかったから、ずっとうまくいくことも可能だった。でも今は毎週試合がある。絶対に落ちる時はあるんですよ。そこでどう考えて次のゲームに持っていくかが、一番大切なんです。学ぶことばっかりですよ。本当に楽しい」

　グリッツに連敗した2試合の中でも、学びがあった。

「じゃあお客さんがたくさん入って、リンクが盛り上がっている中でどういう対処ができたか、とかですね。声だって通らなくなる。その中でどうリラックスして戦い抜くか。メンタルコントロールです」。そこでアニャンの選手たちには、驚かされることがあった。

「アニャンの選手は本当にスゴいんですよ。ヒョンたちはね。試合終わって1回はめちゃくちゃ悔しがりますけど、10分後には次、次って言ってるんです」

「頭がパンクしそうになりましたよ」アニャンで居場所を作るまで

　現在29歳の大津は、ベテランの多いアニャンの中ではちょうど真ん中の年齢となる。上にいるのは、2018年の平昌五輪や、世界選手権のトップディビジョンを経験してきた猛者たちだ。「ヒョン」は韓国語で「兄貴」の意。それだけ大津が、チームに合流してからの半年で、韓国人選手の中に入り込んだ証拠だ。

「頭がパンクしそうになった時もありましたよ。でも問題は言葉じゃなかったです。僕、嫁にも『コミュニケーションの鬼』って言われるくらいなんで。環境が変わったこと、システムも動きも全くゼロからやらなきゃいけなかったところ、その辺ですかね。センターとも話をしないと、しっかり守ることはできない。そこで自分のプレーも説明してと……。とにかくやらなきゃいけないことが多かった」

　昨春の世界選手権で、日本は韓国と久しぶりに同じディビジョンとなり直接対決があった。当時、移籍をすでに考え始めていた大津は、試合を戦いながらも別の視線を持っていた。

「この人たちがいるチームでやれたら、どれだけうまくなれるのかなと。楽しみでしかなかったですね。今（ルーキーの竹谷）莉央人なんか、本当にいい経験していると思うんです。毎日うまい選手とやってたら、絶対にうまくなれるので」

　アニャンの選手を知ったからこその悩みがあるとすれば、代表戦の時だ。アニャンは実質韓国ナショナルチーム。普段のセットと同じ組み合わせが、代表に持ち込まれることもある。大津には彼らの考えていることが手に取るようにわかる。それは日本にとっても貴重な情報となりえるが……。

「僕は自分から情報を伝えることはしないと思います。教えて、と言われれば別かもしれませんけど。伝える部分は本当に難しい。そのあとの戦いもあるわけですからね」

　一方で、チームメートへの当たりに対しても手抜きはない。はっきりとした信条があるからだ。

「僕は相手が来るなら潰そうと思っていつもやっています。代表に行ったら日本のためにホッケーをする。アップの時に相手チームの選手としゃべるのとか嫌いですし。何やってんのと思われるじゃないですか。だから足も叩きにいくし、最後の1秒までチャンスがあるなら突っ込みます。その真剣さが伝わるのが大切だと思うんです」

　真剣に泣き笑いし、悩みすら楽しいと言い切れるメンタル。大津の生き様も、決して「スゴいヒョンたち」に劣っていない。シーズン終盤からプレーオフに向けて、どんな戦いを見せてくれるか。

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【試合情報】冬季アジア大会　男子準決勝　日本vs韓国戦
2/13（木）日本時間15時～　
【大会公式サイト】映像等はコチラから
【大会公式サイト】テキストによる結果＆日程

　男子は準決勝の相手が韓国に決まった。予選リーグでは2-5で敗れた相手だが、ここで勝てば銀メダル＝2位以上確定となるため全力で戦ってもらいたい。
女子は日本、中国、韓国、カザフスタン4ヵ国によるリーグ戦になる。
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