【ジャパンカップ】「真夏の松葉杖」から復活……
横浜グリッツ三浦大輝、大怪我からの復帰戦で決めた決勝ゴールの裏側

「持ってる男」が復帰戦で決勝ゴール。三浦大輝はファンと勝利の喜びを分かち合った

取材・文/今井豊蔵 写真/今井豊蔵

アジアリーグアイスホッケー ジャパンカップ2024
11月30日(土) @神奈川・KOSÉ新横浜スケートセンター
横浜グリッツ 4(3-1、0-0、0-2、OT1-0)3 レッドイーグルス北海道
ゴール:【グリッツ】鈴木、大澤、石井、三浦 【イーグルス】ハリデー、髙木、マッキンタイア
GK:【グリッツ】古川 【イーグルス】成澤
シュート数:【グリッツ】30(19、6、4、1) 【イーグルス】54(19、17、18、0)

ジャパンカップ初戦、延長でレッドイーグルスを下す劇勝

 日本の4チームによるアジアリーグ・ジャパンカップに、最高の勢いで突入したのが横浜グリッツだ。アジアリーグ前半戦の終盤には、レッドイーグルス北海道とHLアニャンという上位チームを相手に3連勝。そして11月30日に行われたジャパンカップ初戦は、本拠地新横浜で延長戦の末にレッドイーグルスを倒し、チーム史上初めてとなる“4連勝”を飾った。この試合で決勝ゴールを決めたのが、開幕直前の大怪我で戦線を離脱していたDF三浦大輝。復帰までの約4か月を振り返ってくれた。

「正直、不安もプレッシャーもありましたよ。流れを止めてしまうじゃないですけど、勝ててほっとしています」

 リンクではファンの前で「お待たせしました!」と笑顔で絶叫した三浦は試合後、こう正直な思いを打ち明けた。チームから「右アキレス腱断裂のために戦線離脱します」と発表されたのは8月4日、開幕へ向け氷上練習がスタートしたころだった。開幕から4か月近くが経ち、ようやく戦線に戻ってきた。

 氷上練習は続けてきており、この試合を前にしたセット発表で、自身の名前が突然入っていたのだという。「練習ではいい感じだったので、やる気しかなくて」。復帰戦は7人目のDFとして、要所での起用が伝えられていたが、実際には試合中に負傷者が出たこともありフル回転。キルプレーでも起用された上に、3-3で突入した延長戦でもシフトが回ってきた。

「残り時間が少なかったので、(同点で)終わってもPSがあるし」と開き直って氷に乗ると4分7秒、ボード際でパックをキープしたFWラウターからのパスを、ゴール正面で受けてシュート。GKのブロッカー側を抜き、パックがゴールに飛び込んだ。

「できすぎです。シンプルにうれしかった。上から見ていてうらやましいなと思っていたので……」

過去経験したことのない4強へ。全日本選手権でも歴史を変える

様子を見ながら……とのスタッフの声もあったなかフル出場。得点力を期待して送り出したベンチに結果で応えた

 今季、上位チームからも次々に勝利をもぎ取るグリッツの戦いぶりを、リンクの2階にある放送席から解説者として見ることがあった。変わるチームの一員になりきれないという自分の立場に、複雑な思いもあったという。「勝った試合をみんなで喜んでいても、じゃあ試合中に下でどんな話し合いが行われているのかわからない。早く戻りたいとずっと思っていました」。そして、復帰を支えてくれたトレーナー陣に感謝する。

 試合を外から見ていて、感じる変化もある。「やっぱり日本人のヘッドコーチ(岩本裕司氏)になって、意思が浸透しやすくなったのはあると思います。システム1つにしても遂行しやすくなったというか。細かいプレーが変わってきたと思います」。次は、チームが過去4強に進出したことのない全日本選手権が待つ。ここでも歴史を変える白星を挙げたい。

 怪我をしていた期間、一番つらかったのは「真夏に松葉杖をついて電車に乗って、通勤したことでした」と笑う。氷を離れても、仕事は待ってはくれないというデュアルキャリアならではの体験もした。シーズン後半、さらに上を目指すグリッツに、頼もしい男が帰ってきた。

Release: