釧路で行われた開幕カード、ひがし北海道クレインズ 対 横浜グリッツの試合は、序盤から力の差を見せつけるようなゴールラッシュを演じ、ホームのクレインズが9−2で快勝。ジャパンカップ制覇に向けて、好調な滑り出しを果たした。
意外にもクレインズが開幕戦を勝利で飾るのは久しぶり。この内容を続け、ファンをもっとアリーナへと呼び戻していきたいところだ。

リンク中央に大型カラービジョンが設置されたホームリンクでクレインズは快勝発進

取材・文・写真/アイスプレスジャパン編集部

変わるがわるのゴールラッシュ。8人で9得点、圧巻の勝利

試合開始直後から、ひがし北海道クレインズの勢いが、抵抗する青き戦士たちを飲み込んだ。

先制ゴールは第1ピリオド2分01秒の早業だった

新たなデザインのユニフォームを身に纏ったクレインズ選手が、試合開始後から相手ゴールに襲いかかり、第1ピリオド1分台にはパワープレーのチャンスでほぼ1年ぶりの試合復帰となるFW西脇雅仁がゴールを挙げたかに見えたが、これは長いビデオレビューの末にノーゴール判定。
ベテランの復活ゴールとはならなかったものの、その直後に同じパワープレーの時間帯でクレインズはまたチャンスを作る。弟・DF大津夕聖からFWサンディス・ゾルマニスがつなぎ、最後は左サイドに開いていた兄・FW大津晃介が約15度の角度から目の覚めるようなシュートを決めて先制点をクレインズがゲットする。

ゴール前での攻防もクレインズが圧倒するシーンが目立った

第1ピリオド7分22秒には、今度は弟・大津夕聖がゴール正面からワンタイマーでシュートを決めて2−0とリードを広げる。

逆襲からのゴールで勝負あり。ルーキーも躍動

一方の、横浜グリッツも、序盤の堅さが取れ徐々に動きを取り戻すと8分38秒にクレインズの反則でパワープレーを得る。

パワープレー。グリッツはブルーラインの位置に平野を置き、狙ったが…

ここでグリッツはしっかりパワープレーの形をセット。イメージ通りの形でパックを回して最後はエースFW・平野裕志朗にシュートを打たせる形に持っていき、クレインズゴールをしっかり攻めることができていた。しかし、グリッツのブルーライン側でのパス交換の際に出たほころびを、FW上野拓紀が見逃さず一気の加速でパックをかっさらいグリッツGK黒岩義博との1対1へ。
上野の強烈なショットでスティックを合わせにいった黒岩のブロックを撃ち抜いたところで、試合としては勝負あり。

ショートハンドゴールを決め、ベンチに凱旋する上野


クレインズが個人技の高さ、コンビネーションの成熟度を見せつけ、最終的には9−2で開幕戦に集まった703名のファンを大いに喜ばせる試合となった。

急遽加入のルーキー、荒木と米山も存在感を発揮

この試合では、9月8日と開幕直前に入団発表がなされた、ともに中央大の3年生、荒木翔伍と米山幸希も選手登録が認められ出場を果たした。

荒木は第2、3ピリオドでかなりのアイスタイム(=出場時間)を得て、じっくりと攻撃に参加。ラインメイトとのコンビネーションも今週戦列に加わったとは思えないほど着実な動きを見せ、初のトップリーグ参戦としては上々の活躍を見せた。

荒木(中央奥・24番)は開幕から出場を果たした

また、米山も第3ピリオドからその存在感が目立つようになり、ルーキーとは思えない落ち着いたディフェンスワークを披露。圧巻だったのは、第3ピリオド11分25秒、ほぼゴール正面でパスを受けた米山が鋭いシュートを放つとパックはゴールネット左スミを捉えるファインゴール。米山は、開幕戦かつトップリーグデビュー戦で初ゴールという結果を釧路のファンの前で披露。その実力を証明して見せた。

ゴール裏から展開する米山(右)

試合後、ファンがスタンドに残る中で行われたヒーローインタビューに呼ばれたのは、大津晃介と米山幸希の2人。

大津(晃)は、「スタートから特に動きが良くて流れに乗っていけた。(ファーストゴールについては)その前に西脇さんの幻のゴールがあったので、そこからいい流れで行けたので西さん(西脇選手)にも感謝したい」と語るとスタンドから大きな拍手が。リニューアルされ自身たちのチーム名が冠されるようになったホームリンク、ひがし北海道クレインズアリーナについて聞かれると、「もう最高です。この場所でアイスホッケーができることがすごく嬉しい。今日こういう形で勝てたので、明日も必ず勝って、皆さんでいいお酒を飲みましょう!」とファンと共に喜びをかみしめていた。

ヒーロインタビューでも充実の表情を見せた大津晃介

米山は「レベルが高く、ついていくのに必死ですが、チームのために貢献したい」と開幕戦出場の思いを語った後、初ゴールについて聞かれ「小原さんのパスが素晴らしかったので、あとは決めるだけでした」と思いを話すと、ベンチに残っていたベテラン陣が大拍手。開幕戦での快勝でチームの雰囲気も非常に良い形となっていることもうかがえた。米山は「パスとディフェンス能力が持ち味なので、ぜひ今後も期待してください」と、更なる成長をファンに約束した。

まずは順調に開幕戦を制したクレインズ。コロナ禍の影響もあるのだろうか、最大3000人超入ったこともあるリンクは空席が目立ち、応援も大きな声が出せない中、コロナ前と比べて試合前にはややおとなしい印象もあったリンクの雰囲気だったが、試合が終わった後にはまさにオールスター揃いぶみ、といった磐石の試合内容に満足して家路についたファンも多かったことだろう。

文字だけが表示されていたリンク中央の得点板は、この試合から360度どの方向からも見やすいオーロラビジョンに変わった。これは釧路市のバックアップによって費用を使い設置されたということで、大いに期待されていることの証でもある。クレインズはその期待に応えるべく、さまざまな部分をブラッシュアップしなくてはならない使命があるが、まずリンクの中では、一つの回答を地元のファンに示すことができた試合だった。

この日の観衆は703人。キャパの割にはやはり寂しい。今後の動員策が待たれる
グリッツも2点を返すなど強化の片鱗は見せた。画像は1点目・角舘のゴールシーン

Update: